ティーチングチップス

1. まえがき


 岡山大学で『授業改善のためのティーチングティップス集』を初めて作成したのが2003年3月のことであった。当時のFD専門委員会が全学の教員を対象に授業改善に関するアンケートを取り,この結果を基に教員の多様な模索とアドバイスを盛り込む形で「ティーチングティップス」が日の目を見ることになった。先輩のご努力に心から敬意を表したい。それから2年の月日が経った。現在,「授業改善のためのティーチングティップス集」は大学ホームページのFD専門委員会のサイトに掲載されて,だれでも容易にアクセスすることができるようになった。ところがこの2年間,FDに関する学内外の実践活動と研究成果は日に日に進展しつつある状況である。本学でも学生・教員がともに創ってゆく双方向性の授業を目指して多様な改革の努力が続けられてきた。シラバス改革と「学生による授業評価アンケート」の改善もその一環である。
 その間の様々な改革の努力は「桃太郎フォーラム」(授業改善のための全学研修)報告書や「OU VOICE」(教育の質的向上を目指して学生と教員が意見交換する定期刊行誌)などに窺うことができる。FD専門委員会では,このような動きを反映した「ティーチングティップス」の改定をこの1年間模索してきた。その成果が改訂版「授業改善のためのティーチングティップス集」である。
 編集の方針として,以下の原則を確認して,委員会のワーキンググループがそれぞれの担当の課題についてまとめたものである。

  1. 岡山大学の常勤・非常勤の教員が教育に当たる際に最低限尊重してほしいことを分かりやすく説明する。
  2. 授業改善関係のキーワード,キーアイデアを分かりやすい言葉で説明しつつ文案を作成する。
  3. 授業実践や内外の動向調査などから得た成果を絶えず反映させる。
  4. 平成15年版の「授業改善のためのティーチングティップス集」をできるだけ利用する。

 従って,本「ティーチングティップス」は,FD専門委員会の公式見解を述べたものではなく,学内の世論を汲み上げつつ,委員会内部の多様な考え方を反映させた結果である。ここに盛り込まれた見方に対する批判も多々あることも想像に難くないが,本「ティップス」が学内の授業改善に向けた議論とコンセンサスの形成にいささかでもお役にたてば幸いである。

平成17年4月
岡山大学教育開発センターFD専門委員会


 平成17年以降,成績評価へのGPA制度,保護者への学生の成績通知,e-ラーニング推進などが導入されている。これらの試みの有効性を示す客観的データ収集に関しては今後の課題であるが,最近の変化を考慮したうえで授業改善のためのヒントを提案する形で改訂を行った。

平成21年4月
岡山大学教育開発センターFD委員会

2. 岡山大学が考える「ティーチングティップス」とは

2.1. 理念
2.1.1. はじめに
 今日多くの大学で授業改善が推進されている。しかし,大多数の教員は大学で教育に従事し始めるまで,それに向けての教授法トレーニングなどを受けてこなかったのが実情である。
 岡山大学では,従来年1回実施してきた新任・転入教員FD研修を平成16年度から春と秋の2回実施に切り替えた。教員の個人評価が制度化され,これに学生による授業評価アンケートの結果も連動するシステムが構築された今,新任・転入者に限らず,教員は競争的環境の下でプレッシャーも感じながら手探りしている面がある。教員の仕事の内容が厳しく問われる環境の中だからこそ,大学は教育の質を保証するため,教育・授業の改善を個々の教員に任せきりにせず,組織として取り組み,切磋琢磨の風を培ってゆくべきであろう。教員が自らの専門性と個性に従ってイニシアティブを発揮し,授業改善の努力をする一方,大学はこれを支援する共通の場を設定する。これによってゆるやかなコンセンサスが形成され,個性的な学風が育まれるというのが望ましいあり方ではないだろうか。
 この大きな目標に向かって大学も個々の教員もプレッシャーを自己改革のエネルギーに変えるたくましさと使命感が求められている。


2.1.2. 教師と学生の間のギャップの克服
 教員と学生の間には授業をどうみるかに関して常に意識のずれが存在すると言われる。このギャップをいかに埋め,学生の学ぶ意欲を引き出すかということが教育の質的向上の鍵となる。
 大学の大衆化が進んだ今日,学生の中には,いかに楽をして単位を取るかということのみに関心を持つものがいることは否定できない。しかし,それは教員の授業のやり方に対する学生の意識の反映とも言える。つまり,もし教員の側に学問の面白さを若い世代に伝えたいという真の情熱と使命感があれば,学生もこれに触発されて自分たちの中に眠っている「学びたい,人間的に大きくなりたい」という意欲をかき立てられる可能性は大きくなる。そして,この可能性が具現化した時,学生たちは楽をして単位を取ることより,学ぶことの楽しさや意義を重視するようになる。また,教員は学生のひたむきさに触れると,激励され,大きな喜びを感じるものである。このような学びあいと励ましあいこそ授業の醍醐味である。この空気を醸し出すのは,学生にも責任の一端があるが,基本的には教師の心構えと姿勢にも大きくかかっている。


2.1.3. よい教師・よい教育
 よい教師は,よい親が子供に及ぼす感化と同様,多くの学生の人生を変えるのに重要な役割を果たす。また,よい教育は教師自身にも利益をもたらすものである。
 研究者・教育者たるものの喜びは,広く人々に働きかけ,これによって自分もまた成長を促されるダイナミズムにある。学生たちの驚き感動する姿は,私たちにも同じ感動と興奮を覚えさせてくれる。さらに,よい教育はまた,社会にとっても価値ある役割を果たす。学生は今日の急速に変化する社会で活躍するには様々な技術や知識を身に付ける必要があるが,個人が受けてきた教育の質と,その人が職業生活や経済生活において活躍できる可能性とは深い相関関係がある。
 その反面,ブリンクリーによれば,大学教育には,もう一面のすぐには見えてこない社会的な価値がある。それは視野の広い見識ある市民を育てるという役割である。換言すれば,自分たちの住む世界を批判的に眺め,自らの生き様や社会のありようについて知識や見識に裏打ちされた決断が下せる人材を世の中に送り出す役割である。大学における教育はこの意味で,民主主義の真の基礎を築く機能を果たす。このような意味深い役割を担っていることを思い起こすことは心を奮い立たせてくれる。
 マキーキーによれば,教育において大切なことは教師が何をしたかではなく,学生の心に何が起こっているかということであるという。教育には無限の複雑さがある。ひとつとして同じ授業はなく,学生も絶えず変化している。学ぶべきことは絶えず生じてくるものである。
 専門知識の発展,新しい学び方と教え方,新しいテクノロジーの応用法,新しいカリキュラムの下で自分の果たすべき役割が変化すること等々,学ぶべきことは尽きない。従って,授業の絶えず変化する力学(ダイナミックス)に敏感なアンテナを立て,臨機応変に吟味・修正する柔らかな戦略をもつことが大切になる。


2.1.4. 岡山大学が考えるFD
 FDは本来,教員一人一人がどのように授業改善するかということに主眼があるのではなく,あくまで教育組織として,全体としての教育をどう改善し,発展させていくかという観点が重要である。
 本学では,この点で大学という知的共同体の構成員全体が,しっかり関わらなければ教育改善の実効性は上がらないと考えている。教員と職員の連携ももちろん重要であるが,教育サービスの受容者である学生たちが,この問題と真剣に向き合ってこそ,よりよい教育がなされるのである。
 「学生参画型教育改善」と称される本学の特徴ともいうべきこのスタンスは,文科省の推進すべき方向の1つとして提示される以前から本学がとり始めたものであり,全国的にみても非常にユニークなものといえる。学生と教員・職員が学生の立場に立った教育改善に向けて恒常的に活動する学生・教職員教育改善委員会(2004年6月までは「学生・教員FD検討会」)を中心に,一般学生も巻き込みながら様々な改善がなされている。
 教員対象の研修(桃太郎フォーラム)をはじめとする各種の大学教育に関連する催しに学生が参画したり,新入生対象の履修オリエンテーションの一部を学生企画で受け持ったりするだけではなく,学生発想による新しい授業科目を提案・実現したり,授業評価アンケートやシラバスを学生の視点で改善したりする等の実績も年々積み上げている。


2.2. ティーチングティップス
2.2.1. ティーチングティップスとは
 欧米の大学では,特に新任教員の支援策の1つとして教授法に関するヒント集が盛んに作成され利活用されている。これがティーチングティップス(Teaching Tips)である。
Tips(秘訣・助言・ヒント・こつ)は,新任大学教師の授業ハンドブックとして作成されている場合が多く,カリフォルニア大学やシカゴ大学などのものがよく知られているが,近年では電子情報としてWeb公開されているケースも目立っている。
 日本では,2000年に名古屋大学が開発した「成長するティップス先生」が有名で,学内外に公開している為,学外者の利用も多い。(http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/tips/
 本学でも,これらに刺激を受けて,2003年3月には「岡山大学版ティーチングチップス」をWeb公開(http://cfd.cc.okayama-u.ac.jp/fd/tc/index2005.html)し,FD専門委員会のHPにリンクさせることで既に多くの教員に利用されている。しかし,この間,名古屋大学でも「書籍版ティップス先生」を刊行し続けているし,例えば山形大学の『あっとおどろく授業改善』(2003年)に典型的に見られるように,ハンドブック型のティップス集に対する根強いニーズもある為,今回,内容の改定に合わせて新任・転入教員用として簡易版ハンドブックも作成した。
 ティーチングティップスは,学内の多くの教員が日常的に活用して初めて意義があるものである。その点では,教育環境の変化に機敏に対応するようWeb版を随時更新することはもちろん,より使いやすい形態を模索する不断の努力も必要であろう。この点に関する教職員諸氏から積極的な改善提案をお寄せ頂ければ更なる改善を進めたい。

3. 授業を始めるにあたって

3.1. シラバスの作成
3.1.1. シラバスとは
 シラバス本来の意味は,教授者と受講生の間で交わす契約書である。したがって,この講義,実習等で何をするかはもちろん,「合」と認定された場合にはどのような事ができるようになっているか(一般目標と個別(行動)目標)が明確でなければならない。最も重要な点は,シラバスを見て予習ができるかどうかであろう。
 岡山大学のシラバスには,授業科目名,担当教員名,開講曜日時限などのほかに,授業の概要,授業計画,成績評価法,その他の参考事項が記載されている。学生は授業の履修選択や履修中,そして最終評価までの情報をシラバスを通して得ることができる。
 複数の教員によって構成される授業の場合,コーディネーターの教員がシラバスを書くことになっているが,この作業がその授業に対する教員相互の合意形成を図る働きも兼ねている。


3.1.2. シラバスで使われる文言
 シラバスで使われる文言は数多くあるが,なかでも「学習目標」は重要である。その他の文言については,「シラバス作成上の留意事項(http://cfd.cc.okayama-u.ac.jp/fd/syllabus/note.pdf)」に詳しく説明しているので,是非一読して頂きたい。
 「オフィスアワー」は教員が学生の質問等に応じるための特定の時間帯(×曜日○時?□時)であるが,学生は基本的に「予約なし」で教員を訪問できるので,そのような場合は最優先で応対すべきである。


3.1.2.1. 学習目標とは
 教育とは,学習者の行動に価値ある変化をもたらすプロセスである。学習者が,学習によって,より望ましい状態に変化(行動変容)するためには,この状態を学習目標として明示しなければならない。
 学習者に明示が必要な目標は,一般目標(Genaral Instruction Objective (GIO))と個別(行動)目標(Specific Behavioral Objectives (SBOs))とに分類される。学習者がすべての個別(行動)目標を達成できれば,その総和として一般目標に到達できることになる。


3.1.2.2. 一般目標とは
 学習の成果を表現したもので,期待される学習成果を記述したものであり,知識,態度・習慣,技能の三領域にわたる内容が望ましいとされている。
 学習者を主語にして,何のためにどのような能力を習得するかを包括的に示す。以下に,一般目標の記述によく使われる動詞群を列挙する。
    知る 認識する 理解する 感じる 判断する 価値を認める 評価する
    位置づける 考察する 創造する 修得する 身につける 等


3.1.2.3. 個別(行動)目標とは
 学習者が一般目標を達成できた時,どのようなことができるようになっているかを具体的に記述したもので,一般目標一つにつき,数個から十数個の個別目標を用意しなければならない。更に,「知識」,「態度・習慣」,「技能」が各々別の個別目標で設定されなければならない。
 学習者を主語にして,一般目標を達成するには,どんなことができるようになるかを具体的に示さなければならない。以下に,個別目標の記述によく使われる動詞群を,知識,態度・習慣,技能に分けて列挙する。

  • 認知領域(知識,想起,解釈,問題解決)
    列記(挙)する (具体的に)述べる 記述する 説明する 分類する 比較する 対比する 類別する 指摘する 関係づける 判断する 同定(特定)する 選択する 予測する 弁別(識別)する 推論する 公式化する 一般化する 使用する 応用する 適応する 結論する 等
  • 情意領域(態度・習慣)
    行う 尋ねる 助ける コミュニケートする 討議する 寄与する 示す 見せる 表現する 感じる 始める 参加する 反応する 応える 配慮する 相談する 等    
  • 精神運動領域(技能)
    感じる 始める 模倣する 熟練する 工夫する 実施する 行う 創造する 測定する 操作する 動かす 触れる 調べる 準備する 等

3.1.2.4. 岡山大学教養教育の基本目標
 岡山大学では,全学共通に実施する教養教育について,その基本目標達成のために以下の諸点を重視している。

  1. 社会倫理に調和した自我の確立(人格形成)
  2. 生涯にわたる学習習慣の形成
  3. 課題探求指向性の獲得
  4. 専門教育の学習に耐え得る基礎学力の習得
  5. 実用的な外国語能力の習熟
  6. 必要十分な情報処理能力の習熟
  7. 人権及び異文化に対する理解

 教養教育の担当者はシラバス作成にあたり,各授業が上記のどの項目と最も関連が強いかを考慮して,学ぶ側の視点に立って内容や学習目標を設定する。また,岡山大学で学ぶことの楽しさを実感させ,学生の意欲を喚起することが必要である。


3.1.3. シラバスを作成する
3.1.3.1. 専門用語は最小限度にすべき
 専門用語は最小限度にするべきである。担当授業科目が,なぜこの大学(学部・学科)で必要なのか,何を目標に,どんな順序で授業が行われ,成績判定はどのようにして行うのか。高校生(新入生は昨日まで高校生)にもわかるように書くべきである。


3.1.3.2. 学生の学習意欲を高めるには?
 学生の学習意欲を高めるにはどうしたら良いのだろうか?例えば,ある授業の達人は,シラバスの「学習目標」に「?の法則について説明できる」という出来るだけ具体的な記述を心がけている。こうすることで,「自分が何処まで勉強すれば,この授業を習得したと言えるのか?」と考える学生に,具体的な目標を意識させることができるのではないだろうか。
 必要に応じて,評価の観点や評価基準を記載することで,学生に習得してほしい点をより明確に伝えることができる。また,多面的な成績評価のため,定期試験,適宜行われる小テスト,レポート,出席などを組み合わせた評価が推奨されている。このような場合に,全体評価における各配分を記載しておくことで,学生が計画性を持ち,また,出席や学習の意欲を継続できることが期待される。


 

3.1.3.3. 学生達が充実させて欲しいと望む項目
 学生達は,充実させて欲しい項目として「授業の概要」,「授業計画」,「成績評価」を挙げている(2004年度「桃太郎フォーラム」に於ける資料より)。本来ならば学生達には「学習目標」にも目を向けて欲しいと思うが,学生たちの声を無視することもできないだろう。


3.1.3.4. 「教科書」は?
 「教科書」は購入しなければならないものと考えるべきだろう。最初の授業以前に指定の書籍を購入した学生が,「買わなくても特に支障はない」と言われて大きなショックを受けたケースもある。同時に何故その教科書が必要なのか,どのような使い方をするのが良いのか等を説明するべきであろう。


3.1.3.5. 学生に知らせるべきこと
 学生からは,記載事項に変更がある場合は授業中にその旨を知らせて欲しいという声が多くある。シラバスの作成段階から分かっている変更などは無いだろうが,教養教育科目等のWebシラバスは基本的に授業期間中いつでも編集が可能である。学生たちに知らせることはもちろん,変更事項はWebシラバスにも掲示しておくべきである。


3.2. 授業へのカウントダウン
3.2.1. 講義室の下見
 学生の前であたふたすることのないように,以下の点に注意して,予め講義室をチェックするべきである。親しい同僚に頼んで,複数でチェックできれば完璧だろう。去年と同じ講義室だから下見は不用と思うのは危険である。視聴覚機器を中心に,その使用方法はかなりのスピードで更新・変更されているのだから。


3.2.1.1. 音声
 一般教育棟では,基本的には,教卓手前のマイクのスイッチを入れれば,教員の声が講義室に流れるようになっている。しかし,「電源は消さないでください」という表示があるにも関わらず,何かの都合で,アンプの電源まで off にする教員も少なくなく(お互い素人である),マイクのスイッチが入らないことが多々あるだろう。アンプ入電には,その講義室のアンプボックスの鍵が必要になる。では,その鍵はどこに??? あなたは,一般教育棟A棟2階の教務第二係まで取りに行かなければならない。もし,講義室が教務係から恐ろしく遠いC棟の上階ならば,あなたの機嫌は悪くなるし,学生はダレルし・・。専門用語でこれを「つかみの失敗」と言う。
 ようやく,マイクのスイッチを入れることができたとする。あなたの美声は,講義室の最後部席まで届いているのだろうか。逆に,あなたのダミ声がナイルの滝の爆音のように学生を襲っていないだろうか。この評価は,同僚に求めるべきだろう。聞こえないことを気にするのと同様に,爆音の襲撃にも気を配るべきである。これらの対処もアンプボックスの鍵が必要になる。結局,視聴覚機器を使用しないでも,当該講義室の一連の鍵は最初から持っていった方が無難だろう。


3.2.1.2. 視聴覚機器
 前述したように講義室の一連の鍵は必須である。また,視聴覚機器といっても,ビデオ,教材提示装置,スライド,OHP,液晶プロジェクター等,様々である。これらの準備に手間取ると,「つかみの失敗」は必至である。特に,今流行の液晶プロジェクターを使用しての講義には,コンピュータとの合わせ技になるため,必ず入念に映写チェックをして欲しい。
 映写できても安心してはいけない。あなたのスライドの中で最も細かい文字・図が最後部席から見えるだろうか。最後部席からレーザポインタの輝点が見えるだろうか。一般教育棟には,有名な「見えずの講義室」がある。この講義室では視聴覚装置(板書でさえも)を使用することを,専門用語で「すべての失敗」と言う。


3.2.1.3. 冷暖房装置
 自分の講義中に居眠りをする教員はまずいない。やはり,教員というものは,学生よりも少なからずアドレナリンを放出して,講義しているようである。興奮した先生と冷めた学生(失礼!!)との体感温度は自ずと異なる。冷暖房装置を使用しているならば,学生にとって適度な温度設定かどうか(換気も含めて)を問うぐらいの余裕が欲しいものである。


3.2.2. 履修者について
3.2.2.1. 履修者の確認
 専門・教養科目を問わず,最初の2,3回目までの講義の受講者は不明である。考えてみれば,受講者の名前どころか本当に岡山大学の学生であるのかどうかも知らずして講義をしているのである。なんとも不思議な気がするのだが,履修者は学生が履修届を提出してはじめて確定するからだそうだ。しかし,多角的かつ厳正な成績評価が求められている現在,出欠や小テストの結果を書き留めるなどの点で,やはり履修者リスト,特に磁気データのそれは必要である。これに関しては,教養科目のうち抽選科目に限るが裏技がある。抽選当選者は,第1回目の講義以前にそのリスト(磁気データ)が完成しているである。これを教務第二係から電子メールで送信してもらうことをお薦めする。


3.2.2.2. 「履修科目の抽選制」とは
 教養部廃止にともない,教養科目の全学実施体制の改善策として,「取りたい科目を取った方が勉学意欲を高める」との理由から,それまで学部指定であった選択枠を取り払い,平成12年から(現行方法は平成14年から)抽選制が開始された。
 同時期に始まった授業評価アンケートにおいて,当該科目の平均評点が3以上を示すことから,抽選制を採用したことで,学生の満足感は達成されていると判断できる。
 現行の抽選方法は,抽選である以上,運不運は避けられない。しかし,抽選漏れの不幸をなるべく全体で分かち合うことを基本理念としているので,全く満足あるいは全く不満という抽選者をださない方法であるといえる。


3.2.2.3. 抽選制の履修科目を担当されている先生へ
 抽選結果と履修者リストを照合し,担当教員が許可した受講生外の不正履修者を把握するように努める。
 学生は抽選への応募には「岡山大学学務システム」(http://kym.adm.okayama-u.ac.jp/index.html)を利用でき,また,担当教員は,欠員補充に関する情報発信のために,受講者への情報発信源(掲示板)としてシラバスを利用することができる。しかしながら,学生はそのような発信によってシラバスが変更されたことに気づかない場合があるので注意が必要である。
 人気科目の集中化を緩和する方法として「当選倍率が大まかに把握できる(例えば,** 10倍以上,* 5倍以上等)ように抽選カードの科目名に記述する」のは,学生側からも歓迎されると考えられる。


3.2.2.4. 授業形態と履修者数について
 大学の授業には講義,演習,実験・実習など様々な形態があり,条件や要因により異なるため,一概に授業の適正規模(受け入れ履修者数)を決められないが,以下の点を考慮すべきである。

  • 講義の場合:最後部の座席に座っている学生にまで目が行き届くことが必要である。座席に余裕を持ち快適に授業を受けることができるように配慮する。
  • 演習の場合:グループでの活動では,全構成員が従事でき,コミュニケーションをとりやすい人数とする。学生が適度な緊張感を持続できる程度の頻度に発表を課すなどの工夫が必要である。
  • 実験・実習について:教室や施設などの条件の影響を強く受けるため,指導者が授業の規模を決定できる裁量は小さい。しかし,危険を伴う実験などもあり,履修者の安全の確保を最優先に考え,授業の規模を検討すべきである。

3.2.3. その他
3.2.3.1. 教科書の注文,プリントの準備
 教科書を利用する場合は,前もって教科書名と部数を注文しておかなければならない。生協から連絡がくる前に,十分な余裕をもって準備されることをお勧めする。
 プリント中心の講義を行う場合でも,内容のバージョンアップを含めた見直しを行うべきである。


3.2.3.2. 実験・実習における機器の点検と修理,TAに対する説明会
 実験・実習で使う機器が適切に作動するかどうか,安全性に問題はないかをチェックしょう。直前では要修理となった時に間に合わない。修理期間を見こして前もって調べておく必要がある。
 実験・実習科目ではTAを利用することがあるが,その際にはTAに対する説明会を開き,実験を安全に行うための一般的注意,器具の取扱い,TAとしての心構え等を教育しておくべきである。


3.3. 最初の授業で心がけたい事柄
3.3.1. シラバスを提示する
 第一回目の授業では,受講学生にシラバスを提示しよう。ただし,ここで言うシラバスは,Syllabusすなわちアメリカ型のものである。本当のSyllabusとは,頁数が10頁,20頁とあり,必要な文献などが全て書かれており,それを見て準備学習ができるようになったものなのである(大学審議会議事録)。
 学生たちは,第一回目の授業に出たからといって受講を決めているわけではない。授業を受けてみて,そしてSyllabusを見たうえで判断するのである。そのため,ここでいうSyllabusには,事務的連絡文書,法的契約書,学術情報(レファレンス)文書,学習指導書的文書の4つの性格が備わっていなければならない。


3.3.2. 意欲を刺激する
 まだ分からないことが沢山あるということを伝えるとともに,新しい問題に取り組む意欲を刺激しよう。その授業でやることが,今後更に最先端の面白い事象を探求していくうえで,どういうバックグラウンドになりうるかという点から「夢」を与えるなどの工夫も必要なのではないだろうか。


3.3.3. 授業に対する不安感を取り除く
 アンケート等により,学生の考えを調べるとともに,授業に対する不安感(ついていけるか?修了できるか?)を取り除いてやろう。これは,特に1年生に有効なようである。


3.3.4.傷害保険等に加入しているか?
 実験・実習科目では,学生たちが傷害保険等に加入していることを確認することが必要である。未加入ならば,加入の必要性を強く説明しなければならない。もちろん,実験・実習を安全に行うための注意事項も併せて述べるようにする。

4. 授業を効果的に行うために
(学生にとって魅力的な授業にするために) 

4.1. 双方向性の授業を行うために
4.1.1. シャトルカードを使う
4.1.1.1. シャトルカードとは
 学生と教員との間の双方向性の授業の確立を目的に開発されたカードであり,岡山大学では以下に示したような形式のカードである。
card
 シャトルカードは学務部学務企画課教務第一係で入手できる。表側に1~7回分の授業用,裏側に8~15回分が印刷されており,全部で12色ある。


4.1.1.2. シャトルカードの応用例
 授業に対する学生の反応や理解度を確認する方法として,非常に有効であると考えられ,実際に以下のような使われ方をしている。

  • 質問をシャトルカードに書かせて,複数の学生が共通して疑問に思っている点については次回の講義で解説する。
  • シャトルカードを通して学生に授業についてのコメント(質問事項,その他講義に対する希望等)を毎回書かせる。講義に対する希望については,次回には気をつける(改善する)ようにしている。
  • 小テストを毎回実施し,その答えをシャトルカードに書かせる。
  • シャトルカードにその日の授業のポイントとなるもの(キーワード)を書かせる。
  • 毎回,シャトルカードを提出させて出席に代える。
  • 受け取ったシャトルカードに対して,とにかく全員に毎回一言ずつコメントを書いて返却する。この作業をすることにより,学生一人一人の顔と名前を覚えることも容易になるだろう。但し,80名以上の受講生に対し,その作業は毎回6時間以上は要するであろうことは覚悟すべきである。

4.1.1.3. その他のシャトルカードに関するヒント
 シャトルカードは12色あるので,色分けして使うこともできる。たとえば,受講学生の学部や学科別に色を変えておくと,回収後の整理や学生が自分のものを探すのに時間が短縮できるだろう。学部教育では,シャトルカードの使用が大変有効であり,大学はこのカードの存在をもっとアピールすべきだろう。


4.1.2. グループ学習を行う
 教員と学生との間でフィードバックしあう,双方向性の授業の代表例に学生参加型のグループ学習が挙げられるが,これにはいろいろな形式がある。


4.1.2.1. グループ形式で作業を行う
 受講生をいくつかのグループにわけ,グループ構成員にそれぞれ何らかの責任ある役割を担当させ,参加意識を高める(全体討論のための大教室を中心に,各グループが作業できる小部屋を用意するのがよいが,現状では大教室でグループ作業をするのが現実的であろう)。全員で討論しながら各構成員が役割分担するが,何度もグループ作業をするさいには,役割を変えながら進行すると良い。


4.1.2.2. チュートリアル形式で行う
 受講生をいくつかのグループにわけ,少人数グループに分かれた学生に対してシナリオを提示し,学生が討論しながらそのシナリオから勉強すべき問題点を抽出し,各学生がそれぞれ自己学習の後,グループ毎の討論で学習結果をまとめてた上で学年全体での総合討論を行う。各グループに1人ずつチューターがつくが,その役割は学生の学習の援助者としてグループ学習・討論が円滑かつ活発に進むようつとめることであり,知識を教えることはない。学生の積極性を引き出す非常に良い方法と考えられる。


4.1.2.3. ロールプレーイング形式で行う
 学生にそれぞれの役割を割り振ってロールプレーイングをさせることで,実践的思考を身につけさせることができる。重要なのは目的を明確にすること,準備をしっかり行うこと,および観察者役に回る学生に対してもなんらかの活動を課すことである。あらかじめ学生全員に必要な資料と課題を与えて準備をさせておくようにしていれば,観察者側に回った学生も,ロールプレーイングの出来に対して適切な批評が可能になる。


4.1.3. ディスカッション・ディベートを行う
 グループ学習以外にも,ディスカッションやディベートは学生のアクティビティや授業への参加意識を高める良い方法である。当大学の先生が実際に行っておられる方法の一つを例としてあげる。
・ 2分間スピーチを学生に課し,それに対するコメント(2人)とスピーカーのそれに対するコメントの場を設けて,主体的な授業参加を図る。



4.1.4. オフィスアワー制について
 その時間に研究室を訪ねれば,必ず教員に会って話をできるという体制を作ることが,オフィスアワー制のねらいである。これにより学生とのコミュニケーションを確保し,授業の双方向性が一層高まることが期待される。オフィスアワーを前もってシラバスに明記すべきであるが,少なくとも第一回の授業においては履修学生に伝えるとともに,ウェブ上のシラバスにも記入したい。
 実際には,教員が多忙なため,学生がその制度を十分に活用できない状況も見られる。また,メールでのやりとりで,学生が不便を感じていない場合もある。しかし,顔を見てのコミュニケーションの機会を確保するためにも,オフィスアワー制も活用すべきであろう。


4.1.5. その他
 双方向性の授業を行う上での,その他のヒントを列挙する。

  • とにかく速い講義を行わない。スライドやOHPに頼らず,板書中心に行い,板書を丁寧にする。これで話すスピードがかなりコントロールされるだろう。
  • 学生の名前を覚えて使う(学生に名前で質問する。質問があったら,名前で指名する)。
  • 学生の発言をうながし,歓迎すると共に,学生の発言,意見,質問を注意深く聴く。
  • 学生の質問には丁寧に答え,意見には建設的に対応し,学生の個々に紳士的に対応する。
  • 学生が理解しているかどうかを鋭敏に感じとり,対応する。さらに情報を求める学生に適切に対応する。

4.2. 大講義授業を行うために
 大学の大衆化,予算の縮小化が進む中,大講義授業は今後も増えていくと思われるが,大教室での授業の場合,学生の主体的活動の程度は低くなりがちである。学生が「ただ聞くだけ」という受動的で,参加意識が希薄になるのを防ぐ方法としては以下のものが考えられる。また,以下のような方法を採らないまでも,講義中にできるだけ学生に質問することは重要なことである。


4.2.1. Buzz Group
 小さなグループに分け,教師の問いかけた問題をグループで議論させ,解決策を共に考え提起させ,発表させる(学生の名前をグループ単位で覚えると覚えやすい)。


4.2.2. Minute Paper
 1分間で小さな用紙に講義内容や質問について,要旨をまとめさせ,自分の言葉で説明させ,解答させたりする。


4.2.3. Problem Posting
 講義の初回に小さな用紙を回し,授業に対する期待,個人的目標,興味,故郷など自叙伝を書かせ,これを学生にフィードバックし,授業方針に生かす。


4.2.4. Two-column Method
 価値に関わる微妙なディスカッションであり,反対論と賛成論とを黒板に2項対立的に整理し,問題を多面的に見る思考方法を磨く。


4.3. 教材・視聴覚機材を用いる
 教科書だけでなく,授業プリントを作成したり,メモを取らせたり(板書を書き取らせたり),視聴覚教材・機器を用いることは,学生の集中力を保たせるだけでなく,授業の理解度を深めるのに役立つであろう。以下に,実際に教材・視聴覚機材を用いる場合のヒントを記す。


4.3.1. 教材(資料や授業プリント)を用いる場合のヒント・ティップス集

  • 重要な項目は20程度以内に整理し,学生が頭に入りやすい様に,あらかじめ箇条書きにしておく。
  • インターネット上で資料を公開(配布)している。
  • 講義内容の資料は授業当日ではなく,事前に配布するよう努める。
  • 講義資料にはできるだけ図を入れる
  • その日の講義の内容を「キーワード集」のような形式にまとめてプリントにして学生に配る。

4.3.2. 視聴覚機材を用いる場合のヒント・ティップス集
 当大学では,液晶プロジェクターとパソコン(Power Point)の組み合わせ,OHP,スライドのいずれかを用いて授業をし,同時にPower Point,OHP,スライド等のコピーをプリントとして配布している先生が多いようである。以下の例も,視聴覚機材を用いる場合の参考になると思われる。

  • 教育用ビデオを用いて講義の終わりに15分程度上映する。
  • ビデオプロジェクターを利用して講義をしている(この方法で授業をされている先生は,この方法がOHPより優れていると考えておられる。しかし,この方法は講義のテンポが速くなる欠点があるようだ)。
  • スライドで講義を行い,板書を書き取らせない(講義へ集中させるため)。但し,その代わりに,復習用にスライドファイルをWEB上で出席学生にOPENにしている。
  • 配布するPower Point,OHP,スライド等のコピーはわざと「虫食い形式」にしておき,授業中に学生に穴埋め式にメモさせる(集中力を持続させるために,常に学生に作業をさせる)。
  • 専門の授業は抽象的な話題に偏りがちなので,ビデオなどを利用して,できるだけ具体性を持たせる。
  • 色々な材料の実物を回覧している。
  • OHP,パワーポイントは,本当に必要な時以外は使わない。板書が重要と考えている。

4.3.3. e-ラーニングに関して
 同時多地点遠隔講義のためのe-ラーニング スタジオが3か所(津島地区では,社会文化科学研究科棟3Fと大学院自然科学研究科棟2F,鹿田地区では基礎医学棟2F)に設置されており,e-ラーニング用の教材も作成可能である。MoodleやWeb-Classによる学習管理システム(Learning Management System:LMS)型の授業も可能になっている。e-ラーニング用の教材を配信するのみではなく,学生の学習履歴などもデータベースとして管理できます。


4.4. 予習・復習のあり方
4.4.1.予習・復習を促すためのヒント・チップス集
 授業内容の理解を深めるために予習・復習は非常に大切である。授業外学習時間をほとんど持たない昨今の学生に予習・復習をどうさせるか。そのヒントを以下に記す。

  • 学生にあらかじめテキストを読ませ,疑問点をメモさせる。そのメモを持ち寄ってバズ学習(4.2 大講義授業を行うために : 4.2.1 buzz group を参照)を行う。
  • プラクテカント(前もって予習して質問に答える学生)を指名して,予習させる。
  • 講義資料を授業当日ではなく,事前に配布し,予習を促す。
  • インターネット上で資料を配布・公開することで,学生に予習・復習する機会を与える。
  • 毎回,レポートを提出させることにより,復習させる(但し,レポートが返却されない場合, 学生は自分のレポートの出来具合について知ることはできず,効果は半減する。フィードバックを必ずすべきであろう)。
  • 講義の始めに前回教えた部分から,まとめの意味で5分程度でできる小テストを行う(前回の授業を理解してノートを取っていれば解答できる様にして復習させる)。
  • 一つの講義の終わりに,その日の復習を込めて10?20分間,演習問題を課している。

4.4.2. 学生に望ましい学習習慣を身につけさせるために
 4.4.1に示した方法による予習・復習の効果を高めるためには,以下の点への留意が必要である。

  • 課題にはフィードバックが不可欠:課題を提出させても, 評価がなされなければ学生のやる気は半減してしまう。一つ一つの課題を入念にチェックできなくても,
    必ずすべてに目を通し, 要点等を説明するように心がけたい。
  • 努力の成果を実感させる:課題に一生懸命取り組んだ分だけの成果や効果を実感できなければ, 学生は教員の指導に不信感を抱きかねません。試験や課題を出す場合は,
    まじめに取り組んだことが結果に反映されるような配慮が必要である。
  • 発展的な学習への喚起も必要:授業の中で学生の満足感を完結させるだけではなく, 参考文献を多く紹介するなど, さらなる学習へ取り組む意欲を喚起することも必要である。また実際には,
    その文献が学内に整備されているか確認し, 学内で手に入り難いようであれば購入を図書館に働きかけたり, 学生に入手方法を紹介したりすることも重要である。

4.4.3. 授業時間外学習に利用できる学生支援のためのインフラやサービス
 学内には,学生,教員ともに意外と知られていないインフラやサービスがある。これらを情報提供できるように知っておくことで,学生の利用を促すことができる。(岡山大学教育開発センター:桃太郎フォーラムXI 2008年度報告書「受けたい授業を創る‐授業法改善のヒント-」第2分科会報告)


4.4.3.1. 附属図書館における授業時間外学習
 学生がグループなどで自主的学習をすることができる学習室が,数多く存在している。また,学生がその目的に合わせて新聞記事や百科事典などから情報を検索,閲覧できるデータベース,電子ジャーナルが整備されている。必要な図書が所蔵されていない場合も,学生希望図書制度などが利用できる。
 岡山大学附属図書館 http://www.lib.okayama-u.ac.jp/
 同 鹿田分館 http://www.lib.okayama-u.ac.jp/smd/index.html


4.4.3.2. e-ラーニングによる授業時間外学習
 英語自習用ソフト「アルク Net Academy 2 (NA2)」は,平成20年度現在、約350の教育機関で採用され,国立大学の75パーセントで導入されている。授業でも使用されているが,授業時間外での利用促進を図りたい。マルチメディア語学自習室(一般教育棟A棟1階)では,e-ラーニング(アルク Net Academy 2)の他にも,TOEIC,TOEFL,英検,あるいは,各国の言語の語学学習ソフトが利用できる。


4.4.3.3. その他の利用可能な施設

  • WAKU2スクエア(ワクワクスクエア):一般教育棟A棟1階及びA棟別館1階に、個人学習、グループ学習のできる自学自習スペースが設けられている。本学学生であれば、個人所有のパソコンで、ネットへの接続も可能である。A棟別館1階は、土日も利用可能。
  • 学生ラウンジ:A棟3階・4階に、講義までの待ち時間を有効に利用できるスペースとして設けられている。
  • イングリッシュカフェ:大学会館に、正規のカリキュラム以外でも気軽に英語にふれられる場として設けられている(平成21年5月オープン)。
  • その他の自習室:A棟1階に語学演習室・自習室、および、情報処理演習室・自習室がある。また、A棟2階には、パソコン室があり、情報機器を利用した勉学環境が整えてられている。


4.5 その他
 その他の授業を効果的に行うためのヒント・ティップスを列記する。

  • 学生に授業についてのコメントを毎回書かせる。あるいは,小テストを毎回実施する。
  • 数回の小テスト及び学生の要望提出により,理解度を把握し講義内容を調整する。
  • 授業の初めに前の授業の復習を行うと,学生の知識の定着につながり,授業のつながりがスムーズになると思われる。
  • 講義中に学生が答えられる質問を行う。
  • できるだけ歩きながら講義する。
  • 授業の中間に5分程度の休憩時間を入れる。
  • 授業は時間通りに始め,5 分前位には終了する。
  • できるだけ身近な,あるいは最近の出来事を例にとって説明する。
  • 一冊の教科書に従うのではなく,複数の意見や説を紹介する(まだ分からないことが沢山あるということを伝える)。
  • メリハリをつける。
  • 毎回の講義で話す内容を,一つのトピックスに絞る。
  • アシスタントを選抜し,最前列に座らせて会話をしながら進める。
  • 本日やることを黒板の左隅に箇条書きする。文字を書かせる。
  • 学生自らに問題を作らせてみると,教員の出す問題とのギャップを通して,学生の現時点での学力などが推察できる。
  • 「サブノート」の作成を義務づけて,自主的に学ぶ機会を作る。
  • 複数教員の授業(漫才型)は学生の集中力を高めるのによい。

5. 評価システムについて

5.1. 学生を評価する
5.1.1. なぜ成績評価が必要か

  • 厳密な成績評価は教員の社会に対する責任である。
  • 「全優」に近い成績評価は,社会が納得しない。
  • 「楽勝」科目にならないようにしよう。学生にいかにして勉強させるか(いかにして勉強してもらうか)を考えよう。
  • 学生を社会に送り出した後のことをまず頭に入れよう。次のような疑問が出たらどうするか。
    • 英語で“A+”が付いているのに,なぜそんなに英語ができないの?
    • この大学の成績評価はどうなっているの?
    • 学生が納得するだけでなく,社会が納得する成績評価をしよう。
    • 学生に開示できる成績評価を。
    • 成績優秀学生の顕彰を行うには厳密な成績評価が基本である。

    5.1.2. 厳密な成績評価を行うために

    • シラバスに記す「成績評価の方法」について,前もって,十分時間をかけて検討しておこう。
    • 自分の講義内容と到達目標達成に合った成績評価の方法を考えよう。
    • 豊富な評価材料を集めることに努力しよう。
    • 評価基準はシラバスにできるだけ詳しく記入しておこう。試験,レポート,小テスト,出席点などそれぞれの重みをいつでも学生に説明できるようにしておこう。
    • 評価後は,GPの分布を確認することも大切である。著しく偏りがある場合には,評価基準や評価方法に問題はなかったか見直す契機になる。例えば,履修している学生のほとんどがA+であるとか,または,Fであるという場合には,学習目標や授業方法を改善する必要はないか検討すべきである。

    5.1.3. 試験問題,レポートのテーマ,小テストなどの難易度

    • 試験,課題の難易度は成績評価の結果に直接関係するので,難易度の設定には注意を払おう。
    • その問題,課題によって評点にどのように差が付くかを頭に入れておこう。

    5.1.4. 評価の基準をどこに設定するか

    • 絶対評価か相対評価かについては教員間でよく議論されるが,本学においての評価として絶対的なレベルを考えながら相対評価を取り入れることが必要である。
    • まず,合格点に達するかどうかの判断をしよう。
    • 合格点に達した中で,評価の割合,A+:A:B:C を設定しよう。特に,選択科目の場合には並列されている他の講義との間で差が大きいと不公平になる。
    • できるだけ総合的な評価をしよう。
    • 到達目標に関連した評価に努めよう。
    • テストによる評価は,目標に合った難易度を設定し,期末テスト1回だけよりも,小テスト,中間テスト等,できるだけ多くデータを取ろう。
    • レポートによる評価も,出来るだけ多くのレポートを集め,目標にあった評価基準を設定しよう。
    • カンニング,出席の代返は不公平の原点になる。
    • レポートのまる写し,あるいはそれに近い状態を見逃さないようにしよう。両成敗にすることもあり得るが,学生にはあらかじめ周知させておこう。
    • 出席の取り方を工夫しよう。出席だけとって出て行く者,初めと終わりだけ出席する者など,代返以外にも不公平が生じることがある。シャトルカードの利用,途中での小テストまたはアンケートなどによるチェックも効果的。
    • 受講態度も評価の対象となる。
    • 席が満員でない限り,一般的には前の席の学生ほど熱心であろう。出席点は後部ほど減点するのも1つの方法である。その場合,教室の座席配置シート(座席表,出席記入を兼ねる)を回し,自分が占めている位置に氏名を記入させ,授業中,教員の手元に置いておく。この方法は,途中で抜ける学生,眠っている学生をチェックできる利点がある。TAがいれば効果的である。

    5.1.5. 授業へのフィードバック

    • 途中で行う小テスト,小レポートなどで,学生の理解度を把握し,次の授業に生かそう。
    • 前の学期,前年度の評価結果について反省し,次期,次年度に生かそう。

    5.1.6. その他
    • 大人数クラスの場合,特に成績評価が不公平にならないよう注意・努力する必要がある。
    • 大人数クラスでは教員の目が隅々まで届かない。
    • 大人数クラスではTAによるサポートが必要となる。
    • 実験,実習科目の成績評価についても,到達度,努力度,受講態度,出席などの項目を設けよう。
    • 同一科目で担当者が異なる授業間において,成績評価に対して学生が不公平感を持つことを避けるためには,各授業科目のGPの平均や分布のデータは参考になる。

    5.2. 授業評価アンケートとは
    5.2.1. 授業評価アンケート
    5.2.1.1. 授業評価アンケートの目的

    • 学生による授業評価アンケートは,2002年度現在で,全国の大学の84%で実施されている。
    • 授業評価アンケートには (1) 大学が行う組織的な授業評価(授業の質の保証,要改善授業支援,教員の教育評価資料など)と,(2) 授業担当者個人が活用するための改善資料という2つの側面がある。このうち,(1)
      に関しては,大学は絶えず自己の教育,研究および社会的寄与について自ら検証し評価することが要請されている。(2) に関しては,独りよがりな判断や思い込みを避ける大切な資料となる。
    • 評価報告書は単なる現状の羅列や分類整理ではない。どこがどう変わったのか,何が新しくもたらされたのかを示し,行動強化プログラムと対応させながら今後の方針を決めていく必要がある。

    5.2.1.2. マークシート型のアンケートの目的と利用法

    • 個々の授業が学生にとって有効であったか,あるいは,どのような問題点があったかを学生が評価し,その結果を大学教育の改善に役立てることを目的としている。
    • 平均値3.0以上が望ましいことは言うまでもないが,0.1刻みで数値を上げることばかりに囚われてはならない。
    • 平均値は,授業の形態や受講生の数によっても影響を受ける。また「あまり期待しなければ満足度は高い」と言われることもあり,留意する必要があるだろう。
    • 平均値ばかりでなく,各評点の散布度にも目を向けるべきである(平均値が3以上であっても評点1や2が多ければ改善が必要であるだろう)。

    5.2.1.3. マークシート型のアンケートの質問項目
     現行のマークシート型アンケートは以下の通り。いずれも5段階評価である。

    • この授業全体に対するあなたの評価を総合的に5段階で表して下さい。
    • 担当教員の授業に対する熱意・意欲を感じた。
    • 教科書の選定,参考書の紹介,資料の配布は,適切であった。
      (実習・実験の場合:説明資料,教材,機器などの準備は適切であった。)
    • 板書や視聴覚機材の利用は,適切であった。
    • 講義や説明は聞き取りやすく,理解しやすかった。
    • 授業全体のスケジュールや1回の授業の時間配分は適切であった。
    • 予習・復習についての指導や宿題・課題・レポートの指示は適切であった。
    • この授業の予習・復習や宿題・課題・レポートなどに積極的に取り組んだ。
    • この授業を受講することで,この分野の重要性をさらに深く認識するようになった。

    5.2.1.4. マークシート型アンケートの留意点

    • 全授業科目で実施することを原則としている。
    • 回収箱への投函に代えて,アンケート実施直後に,学生立ち会いのもとに,担当教員が封緘する回収方法に切り替えられることになった。

    5.2.1.5. 自由記述アンケートの目的と利用法

    • 数値では表現できない質的な情報を求め,授業改善に役立てることを目的としている。
    • 不満意見ばかりでなく,ポジティブな評価も参考にするべきである。
    • 時には不真面目な意見もあると思うが,教育者として寛容に受け止めよう。

    5.2.1.6. その他のアンケート

    • 各学部や部会が全学アンケートに質問項目を付加して行うアンケートもある。
    • 各学部や部会が別の様式で独自に実施するアンケートもある。
    • 教育改善委員会が実施するアンケートもある。
    • 意見箱に,授業や教育設備への改善意見が投函されることもある。

    5.2.2. 授業評価アンケート結果を如何に自己の授業改善に繋げるか
    5.2.2.1. 個々の教員レベルで問われていること
     授業評価アンケートにより,個々の教員は,授業が有効に機能しているかどうかをある程度推し量ることができる。教師の側に問題がある場合,どのような問題点があったと学生が感じているかを冷静に受け止めて,教育の改善に役立てるよう努力が求められている。アンケート結果は教育の終りでなく始まりであると考えると,有効な活用につながるであろう。
     アンケート結果を分析し,より効果的な授業を創っていくためには,教育内容と教授技術の絶えざる創意工夫が問われていることは言うまでもないだろう。授業の全体的評価だけでなく,個々の評価項目の数値を注意深く検討することによって,何をどう工夫すればよいか見えてくる可能性が高くなる。その際心しておきたいことは,いかに点数を上げるかではなく,受講生の側に真の学びを呼び起こすために,何が必要かを読むことが大切になってくるということである。
     授業評価アンケートは,神ならぬ人間が人間に対して行うものであるから,数値のみで授業の本質的な価値が完全に公平に測れるわけではない。個々の教員も大学もこのことを自覚し,数値のみに踊らされることのないようにしたいものである。にもかかわらず,授業評価アンケートから授業改善のヒントを得ようと耳を澄ますと,必ずや改善の方向性が見えてくるのではないだろうか。岡山大学が,数値化できない自由記述アンケートを数値評価と併用しているのは,このために他ならない。
     いまひとつ心しておきたいことは,教養教育科目であれ専門科目であれ,私ども大学人は社会から負託された責任があるということである。私どもは,授業評価アンケートも広く社会に対して説明責任を果たす一環であるという認識に立っている。アンケートの一項目で,基本的にシラバスに則って授業が行われたかどうか尋ねているのは,この考え方によっている。日本の大学が従来説明責任を充分に果たしてこなかったから,高等学校をはじめ,広く社会から進路指導という名の偏差値による輪切りでしか評価されなかった。私たちはこの状況を本気で変えたいと思うから,厳しい評価を甘んじて受けることによって,社会に対して説明責任を果たそうとしているのである。大学全体としてはもとより,個々の教員もこの自覚に立たなければ,負託された責任は果たせないのではないだろうか。


    5.2.2.2. 大学全体として,あるいは教育グループ単位で問われていること
     授業評価アンケートの実施は今日多くの大学で行われており,それ自体で大学の独自性を示す指標ではなくなっている。しかし,これをいかに有効に運用し,授業改善に結びつけるかということは,教員個人レベルだけでなく大学全体,あるいは各教育グループとしても課題として問われている。教員個人のレベルではいかんともし難い教室等の設備改善や全体としての回収率の向上に向けた努力は,組織として絶えず目標を堅持して運用に当たらなければならない問題である。例えば回収の際,回収箱とは別に各教員が回収・封緘する方式が導入されたが,封緘を怠ると,本学は学生の記名式を取っているため,彼らの不安を呼び起こしかねないなどの運用上の問題がある。
     平均評点3未満の授業があることについて,大学として,あるいは教育グループとして,これを減らしてゆく努力が問われている。平均評点3未満ということは,例えば,質問項目1:「この授業に対するあなたの評価を総合的に5段階で評価してください。」に対して,「よい」よりも「悪い」と評価されていることを意味する。担当教員個人ばかりでなく,教育グループ全体の責任において,カリキュラムとの整合性や自由記述アンケートの回答内容などを多角的に検討し,3未満になっていることについての原因を究明していくことが社会の付託に応えるために必要であろう。
     平成16年度より教養教育科目(専門基礎科目,ガイダンス科目を除く)のアンケート結果が原則公開され,すでにWeb上で学内限定閲覧ができるようになっている(http://cfd.cc.okayama-u.ac.jp/)。アンケート結果については,学部のみならず,各学科目部会においても,今後は教養教育に責任をもつ母体としての役割が重視されるようになるであろう。この意味において,授業改善の問題も,教員個人単位ばかりでなく,教育グループ単位での年度計画(行動計画)に基づく検証が求められている。


    5.2.3. 学生からの要望にどう答えるべきか
    5.2.3.1. 学生からの要望に答える必要性

    • 授業改善に関して教員だけでは考え方に偏りが生じる。したがって,学生からの要望を聞くことによって,ベターな方向を目指す必要がある。
    • 学生からの要望がすべて真摯になされるということはないであろう。とはいうものの,大半は誠実なもので占められていると思われるので,これを取り上げ,授業改善に結び付けていくことには大きな意義がある。

    5.2.3.2. 自由記述アンケートの実情

    • 学生からの要望を聞く手立てとして,当大学には「自由記述アンケート」がある。このほかにも手立てが考えられないことはないと思うが,手立ての数を増やせば,単純に改善が進むというものでもない。
    • 「自由記述アンケート」は,学生からいつでも自由に提出できるようになっているが,実際には,各セメスターの終期以外に提出されることは少ないというのが現状である。
    • 各セメスターの終期に提出された場合,事務処理上避けられないことではあるが,その内容が教員に伝達されるのは,次のセメスター以後になる。そうすると,どのような意見であっても,教員がそれを聞いて改善・修正するのは次のセメスター以後にならざるを得ない。
    • 「自由記述アンケート」を提出した学生としては,以上のとおり,自分の意見が反映されるのは,自分の後輩の学生からであり,それはそれで意義深いものと思われる。しかし,アンケートを提出した学生自身が講義を受けている際には,改善が望めないということになっている。

    5.2.3.3. シャトルカードなどの利用
     教員の中には,シャトルカードを利用し,日々の授業改善に取り組んでおられる方が存在する。その場合は,当該講義を受講している学生の要望・意見を直ちに取り入れることができるものと思われる。しかしながら,全教員に対してこれを強制することは,なかなか困難である。


    5.2.3.4. 要望への対処
     学生からの要望にも,その内容が当該教員の改善だけでできるもの,大学全体で対応すべきもの,予算措置を必要とするもの・しないものなどさまざまある。したがって,大学全体としても,これらの要望に答える部署が必要である。当大学では,学務部やFD委員会などがこれに当たっている。この中で誠実に対応することにより,学生の要望に答えられるのではないだろうか。


    5.2.3.5. その他の方法の模索
     現行のものでも,学生の要望を聞く仕組み,およびこれに答えるシステムはすでに構築されているものの,上記のように,講義を実際に受けている学生への対応はできていない。これへの対応策としては,「自由記述アンケート」を各セメスターの中間に提出させることや,それに代わるものを提出させることが考えられる。そうすれば,学生にとっても,自分自身が受講する講義の改善につながり,より一層誠実な意見・要望を引き出せるのではないだろうか。

    6. アカデミック・アドバイザーについて

    6.1. アカデミック・アドバイザーとは
     アカデミック・アドバイザーは,担任または指導教員とも呼ばれ,学生に対して学習面や生活面について直接指導する教員のことである。高学年で,ゼミや講座に配属された学生についてはその学生を指導する教員がその任務を負う。学部や学科によって指導体制は異なるが,一人の教員に対して数名から数十名の学生が割当てられ,学生の相談を受けたり,学習や生活上の指導を行ったりする。学生が必ずしも担当のアカデミック・アドバイザーの教員の授業を履修しているとは限らないので,特に新入生に対しては必修科目担当の教員等を副担任に割り当て,授業への出席状況等をアカデミック・アドバイザーに適宜連絡できるような体制を構築しておくこととしている。


    6.2. 成績不振学生への対処
    6.2.1. 学生の成績を把握する
     成績不振の学生を指導するためには,そのような問題を抱えている学生を把握することが先決である。成績不振学生を早期に発見し適切な修学指導をするために,現在,各学部,研究科ごとに独自の工夫がなされているが,保護者への学生の成績通知の開始に伴い,さらなる早期発見と指導体制の強化が求められる。
     成績不振の学生は出席状況に問題がある場合が多いので,6.3の対処を同時におこなう必要もある。把握の仕方としては,学部や学科単位で成績が一定の基準に満たない学生を成績不振学生と判断していく方法と,アカデミック・アドバイザー個人が学生の成績を把握して成績不振学生であるか否かを判断していく方法が考えられる。
     前者の場合は,学部や学科は成績不振学生と判断した学生の担当の教員に連絡をし,教員は教務委員会等と相談しながら学生の指導に当たっていくことになる。後者の場合,学生の成績を把握する際には,学生のプライバシーにも十分に配慮する必要がある。学生との対話の中で,学生自身から自ら成績について担当教員に相談を持ちかけるようなシチュエーションが望ましいと思われる。ただし,アカデミック・アドバイザーの教員と学生の信頼関係が構築されていなければ,学生は教員に成績について話したがらないであろうし,たとえ話したとしても,その後の指導がうまくいくとは思えない。アカデミック・アドバイザーとなった教員は,日頃から担当している学生と頻繁にコミュニケーションをとるように心がけ,信頼関係を構築しておくべきである。
     いずれにしても,何らかの原因から,アカデミック・アドバイザーと学生の間に信頼関係を構築できないような事態が発生した場合には,速やかに教務担当の教員など然るべき第三者が間に入って関係を修復することが望ましい。しかし,それでも修復困難な場合には,アカデミック・アドバイザーの交代が必要である。


    6.2.2. GPA制度の活用
     平成20年度入学の学生から,成績表記法が変更され,従来の4段階評価から,A+,A,B,C,Fの5段階評価となり,それぞれに4,3,2,1,0のポイントが割り当てられ,その平均が成績表に記されるようになった。この変更は,修得した単位の数よりも質を向上させようという目的がある。すなわち,「A+であろうと,Cであろうと2単位であることは同じ」と考えるのではなく,A+をとるように努力することが期待されている。
     このGPA制度はアカデミック・アドバイザーによる修学指導にも活用できる。学生のGPAの値の変化に注目する。特に,急激に低下した場合にはその原因を学生とともに考え,学生自身が自らの生活面,学習面の問題に気づくように促す。問題が明らかになれば,改善へ向けての努力を促し,適切な支援を行うことができる。

    • 履修登録にあたり,予習復習の時間の確保も含め,必要十分な授業を検討させ,学生の能力に応じた履修登録単位数の指導を行う。上限制が取り入れられている学部においては留意する必要がある。
    • 履修取り消しの制度について十分に理解させ,取り消しが必要な場合には速やかに手続きをするように指導する。
    • 修得単位の総数を増やすだけではなく,単位の質を高める(GPAが上昇する)ように促す。
    • 成績を確認する際にも,単位数だけではなくGPAの値にも注意するように促し,GPAの変化を確認できるように,成績資料を保存しておくように指導する。

    6.2.3. 成績不振の原因・理由を明らかにする
     成績不振学生に対する指導にあたっては,まず,成績不振の原因・理由を明らかにしていくことが大切である。その際には,指導教員が成績不振の原因・理由を一方的に断定するのではなく,学生が自分でそれに気付いていくことが望ましい。指導教員に求められるのは,学生の成績不振の原因・理由を考え,一緒に問題を克服していこうとする姿勢である。学生には,現在の学習状況を改善することが必要であることや,現状のままでは将来の進路選択等に大きな支障があることを自覚させるとともに,学生自身が問題解決に真剣に取り組みさえすれば,指導教員だけではなく学部(大学)全体がそれを支援する体制が整っていることを認識させるべきである。
     成績不振の原因・理由としては様々なものが考えられる。学生本人の努力不足や不規則な生活態度などが原因の場合もあれば,精神的・身体的な問題や病気も考えられる。また,友人関係や家族に深刻な問題を抱えている場合もある。これら全ての問題に指導教員が関わっていくことができるわけではないので,教員にできることとは何か,できないことあるいは関わるべきではないことは何かを指導教員自身が理解しておく必要がある。精神的・身体的な問題や病気であれば指導教員よりもむしろ専門家の治療や助言が必要となろう。そのような場合であっても,指導教員としてできる限りの努力をしていることを示し,学生が「見捨てられた」という気持ちになることのないように配慮しなければならない。
     また,場合によっては学生の保護者と連絡をとらなければならないことも考えられる。その際には,留年の可能性があると判断される基準等を伝えることも必要であろう。ただし,学生本人に断りなく勝手に連絡を取ることには慎重になるべきである。学生との信頼関係を壊す恐れもあるからである。保護者も常に協力的であるとは限らないので,学生の問題解決には,大学だけではなく家庭のサポートが必要であることを十分に理解してもらわなければならない。


    6.2.4. 成績向上へ向けての指導をする
     成績不振学生に対して「もっと努力するように」と諭しても,学生自身がその気持ちにならなければ指導も無意味である。指導教員の役割は,学生が自分で問題解決の方法を見つけ出し,それに向けて努力することを支援することである。具体的には,次のような役割が考えられる。

    • 客観的な聞き手:教員自身の考えや思いを学生に押し付けるのではなく,学生の話の聞き役に徹し,学生自身が問題の解決方法を見つけ出すサポートをする。
    • 問題の整理:問題を抱えている学生は混乱して自らの陥っている状況を把握できていないことが多い。学生が語っていることをより客観的な視点から,明確な言葉に直してフィードバックしてやることで,学生が自分の状況を冷静に把握することを手助けする。
    • 選択肢の提案:あくまで学生自身が問題の解決方法や自らの行為や態度の選択肢を考えることが重要であるが,彼らの知識や経験では考え付く解決方法や選択肢は限られている。
      教員には,自らの知識や経験をふまえて,学生が考え付かない選択肢を提案してやることも必要である。
    • 専門家への仲介:学生の抱えている問題が指導教員の手に負えないものであることが判明した場合には,医師やカウンセラーなどの専門家の助けが必要である。その際には,6.4に示す学生支援センターや保健管理センターを利用することもできる。また,学生のプライバシーには十分に配慮しながら,問題を一人の教員が抱え込むことなく講座や学科等で問題に対する認識を共有しておくことも必要である。また,指導教員は専門家に相談した後も,問題を任せてしまうのではなく,学生自身や相談した専門家と連絡を取りながら学生を支えていかなければならない。学生が「見捨てられた」とか,「たらいまわしにされた」と感じることのないように,指導教員が常に気にかけていることを伝えることが必要である。

    6.3. 不登校気味の学生への対処
     不登校気味の学生への対処も基本的には成績不振学生への対処と同じである。ただし,成績不振の原因が努力不足や不規則な生活などが多いのに対して,不登校の原因は教員の力だけでは対処できない病気や精神的な問題などであることも多くより慎重に取り組むことが求められる。


    6.3.1. 学生の状態を把握する
     ゼミの学生や自分が担当している講義を履修している学生であれば,出席状況の把握も容易であるが,1回生や2回生に関しては,指導教員になっているからといって学生と接する機会があるとは限らない。そのような場合は,学生の状況を把握することは非常に困難である。指導教員を引き受けた以上,学生の生活状態を把握するためにも,できる限り頻繁に担当している学生と接する機会を持つべきである。その際に,講義への出席状況や,日常生活で問題を抱えていないかといったことを尋ねる必要があるが,問題があっても学生からはなかなか言い出しにくいものである。機械的に尋ねるのではなく,対話の中でそのような話題を出して学生が自然に言い出せるようなシチュエーションを作ることが望ましい。また,副担任制をとっている場合には,その制度を活用することも必要である。
     以上のような指導をしていくなかで問題の発生を未然に防ぐか,比較的解決が容易な段階で問題を発見できることが望ましいが,問題が深刻な状況に陥ってしまった場合の対応は非常に困難である。つまり,指導教員が気づいた時には,学生が既にほとんど大学に登校していない状態であったという場合である。この場合は,何とかして本人と連絡を取って,直接会って話をする機会をできるだけ早く持つ一方で,必要に応じて学生の保護者と連絡を取らなければならない。
     学生が不登校となる場合には,学外の諸活動(アルバイト等)にのめりこんでいる場合や,家や下宿に引きこもってしまっている場合も考えられる。いずれの場合も連絡が取りにくく対処が難しいが,特に後者の場合には,無理に押しかけていって指導をすることは逆効果となる場合もあるので,専門家に相談の上対処することが望ましい。


    6.3.2. 不登校の原因・理由を明らかにする
     不登校の原因・理由を明らかにする場合も,成績不振学生への対処と基本的には同じである。ただし,学生自身との接触が困難な場合や,問題が,教員が対処できるレベルでない場合も多いので,その際には指導教員が一人で対処するのではなく,講座や学科単位で問題に対する共通の認識をもつようにするとともに,学生支援センターや保健管理センターに相談,協力依頼をすることが必要であろう。
     保護者との連絡が必要となる場合も多いと考えられるが,非協力的な保護者に対しては状況を十分に理解してもらった上で,大学も学生の支援に努力するが家庭のサポートも不可欠であることを粘り強く説いていくことが必要である。
     また,不登校の原因・理由が,進路変更ということも考えられる。この場合は,学生が将来に対してどのような希望を持っているかをよく聞いたうえで,退学または休学も選択肢の一つではあるが,その決断については慎重でなければならないことを説明すべきである。


    6.3.3. 生活改善へ向けての指導をする
     不登校の学生に対する生活改善へ向けての指導も,成績不振学生への指導と基本的には同じである。ただし,場合によってはより慎重な対処が必要なこともあるので注意が必要である。
     また,不登校の原因が進路変更等であって学生が退学や休学を決断している場合でも,指導教員として責任ある態度と行動を示すようにすることが求められる。
    (池田輝政・戸田山和久・近田政博・中井俊樹『成長するティップス先生 授業デザインのための秘訣集』玉川大学出版部,2003年,を参照し作成。)


    6.4. 学生支援センター・保健管理センター

    6.4.1. 学生支援センター
     「学生相談室」(一般教育棟C棟1階)では,学生自身や保護者などからの悩み相談,学生生活全般に関する相談に対応している。「キャリア支援室」(大学会館1階)ではキャリアアドバイザー等を配置し,キャリア教育と就職支援のための相談および就職情報の提供を行っている。学生支援センター鹿田室は,鹿田キャンパスの管理棟2階学務課内。連絡先や利用の仕方は,次のHPに詳しく説明されている。http://kymx.adm.okayama-u.ac.jp/hp/s_center/index.html


    6.4.2. 保健管理センター
     精神的,身体的な問題や病気が疑われる場合には保健管理センター(津島キャンパス:大学会館の北の建物,鹿田キャンパス:医学部記念会館2階)へ相談することができる。診療は無料。個人的な秘密は厳守される。
     保健管理センターの利用の仕方は,次のHPに詳しく説明されている。http://www.okayama-u.ac.jp/user/hokekan/index.shtml
     最近,学生のメンタルケアに関する問題も多く発生している。メンタルケアの方向性であるが,大きく次の4つに分けられる。①現状維持(工夫しながら,そのまま学業を続ける)②スピードダウン(留年・休学なども利用し,ゆっくりしたペースで進む)③ゴール変更(例:教育学部を卒業はするが,教員にはならずサラリーマンになる)④方向転換(転学部・退学などし,新たな道をめざす)である。どの方向性を選ぶかは,学生のメンタル問題の性質や学生の置かれた状況などにもよるが,学生が所属する学部学科の特性にも大きく左右される。それぞれの学部学科の特性により,メンタルケアの方向性にも違いがあり,センターの専門家と相談しての対応が有効である。
     (岡山大学教育開発センター:桃太郎フォーラムXI 2008年度報告書「受けたい授業を創る‐授業法改善のヒント-」第4分科会報告)



    7. リンク集

    7.1. URL

    7.2 参考文献

    • 三尾忠男,吉田 文編著『FDが大学教育を変える』2002年,文葉社第3章第1節 誰にとってのFDか ─岡山大学・学生・教員FD検討会がめざすもの─
    • 矢内秋生「サービスの受け手の視点を生かす学生参画型のFD活動─岡山大学─」『Between』No.191,2003年1月
    • 岡山大学広報『いちょう並木』No.23,2004年12月,特集記事 「学生参画による教育環境の充実」
    • 南塚信吾「大学教育における学生参加」『大学教育学会誌』第22巻第2号,2000年11月
    • Brinkley, Alan, et al., eds. The Chicago Handbook for Teachers: A Practical
      Guide to the College Classroom (Chicago: Chicago U.P., 1999), pp. 169-70.
    • McKeachie, W.J. McKeachie’s Teaching Tips: Strategies, Research, and Theory for College and University Teachers. Boston: Houghton Mifflin Company, 2002. Preface